一大産地和歌山、過去にない大凶作に
降雹広範囲で、等級著しく低下
令和6年度産梅作柄状況
梅の一大産地で知られる和歌山で、今期の作柄が平年の半作以下という、これまで過去にない大凶作となっている。この状況は和歌山県内のみならず、作柄不良が全国的とあって、他産地の状況もメディアに取り上げられ、この窮状がクローズアップされている。
この作柄不良については、既に3月末頃から指摘がされてきたのだが、農家によっては平年の3割程度という場合もあり、今期の作柄は想定以上に悪いと言わざるを得ない。実なりが悪くない園地もあるようだが、概ね厳しい状況であることは間違いない。
実際に6月初旬にみなべ町や田辺エリアの園地を覗いてみると、「枝なりに梅がぎっしり」という梅の木など皆無で、今季は梅林を覆う青いネットが早々に巻き上げられたところも多く、産地全体でそのネットに覆われるエリアが著しく少なかったという。
更に3月20日に降雹が広範囲にあった事の影響は大きく、等級を著しく低下させ、加工業者は状態の良い原料が手に入らないという。市場に入荷する梅の多くで傷が多く、更にはカメムシの被害を受けて浅黒いシミに覆われている。ここまで悪い状況はこれまで見た事がなく、過去にない状況と関係者が口を揃える。
市場取引価格の上昇も急速且つ高値推移に
翌年の作柄次第で状況の改善を見込めることや、在庫が確保出来ていればと楽観的な見方もされてきたのだが、市場への入荷状況などから想定以上に悪い作柄にこの先を懸念する声が多く聞かれ、市場取引価格の上昇も急速で、且つ高値推移だったこともあり印象的な今季の市場状況だった。
大手を中心として加工業者の多くは在庫を十分に確保しているというが、一方で昨年までに在庫を吐き出した加工業者もいるようで、その為か収穫期前に在庫確保に躍起にならざるを得なかったのだろう。収穫期目前の4月頃、今期作柄不良を懸念(予想)してヒネ在庫の流通に動きがみられたようだ。
産地の「維持・継承」を懸念し値上必至
梅の主要産地は、和歌山を筆頭に、群馬や福井、山梨、青森などが挙げられる。和歌山県は令和5年度では栽培面積4840haで、収穫量は6万トン。収穫地2位となる群馬が栽培面積を844haで、収穫量5千520t。和歌山と群馬以下では、栽培面積と収穫量に大きな開きがあるものの、やはり重要な産地である。
しかしながら、この状況が今後続くようであれば、和歌山以外の他産地は梅の産地といえない状況となってしまうのではないのか。当然、和歌山においても今後の産地の維持と継承は一層厳しいものとなるに違いない。
また温暖化に伴う環境変化は、秀品率、収穫量を共に著しく悪化させる事態となり、これが和歌山のみならず全国的な状況にあるだけに、来季以降に向けて適切な施策の打ち出しが求められる。特に果樹である梅は一年一作であり、産地の継承も後継者不足等から大きな課題となっており、青梅のみならず加工用の梅も適切な価格での取引が必至であり、取引価格の大きな乱高下は農家、加工業者にとっても体力を削がれるだけに、長期的な視野で取り組むことがこれまで以上に必要とされる。このような状況から、紀南JAや行政においても適切な肥培管理を促すのではないかと考えられるが、温暖化に伴う気温上昇を人為的にコントロール出来ないだけに、来季の作柄が例年並みに改善することが容易とは考えられない。当然ながら、市場での取引価格の高値推移は想定外であり、物価上昇に伴う副資材の高騰も加わり、今期新物の流通を目前に値上げは必至の状況だろう。
群馬をはじめ山梨や長野、青森においても作柄は過去にない状況にあり、加工業者らは価格の改訂に向けて動いている。但し、現状のマーケットの動きや円安に伴う状況変化により、消費動向は低迷気味にあるだけに、価格の改訂も悩ましい課題となっている。そのため、アイテムの集約や内容量の調整など、各社が対応に追われている。
いずれにしても、この窮状の改善を目指して、農家と加工業者、更には紀南JA、行政との連携は欠かせないのではないのか。