市場入荷1週間早く、生梅単価下落に収穫のピークも園地で農家の作業風景見えず
令和5年度梅の作柄状況
昨年から懸案となっていたのが、和歌山の梅の作柄の行方だった。原料過多によって、予想されながらも混沌とした様相はこのまま覆すことが出来るのか、それぞれの努力はもとより第1次産業から第6次産業の連携と持続可能性も問われているのではないだろうか。
令和5年度産梅干の作柄は、良好に推移したといっていい。日園連の調べでも4月時点で南高梅は前年比104%、和歌山県が前年比102%が予想されたきた。5月に入り一部で、雹害の報告があったものの大きな影響はなかったとみられる。また、5月末の台風による前線の発達は、一部で被害が出るなど、梅の擦過傷も懸念されたが、さほど影響がなかったようだ。むしろ、青梅の収穫シーズンを迎え、十分な降雨が梅の生育を助け豊作傾向となったのではないか。
昨年、一昨年と2年に渡り加工業者らは潤沢に原料確保を行なっており、その為令和5年度産作柄がどうあろうと、農家の出荷量に見合うだけの買付意欲が伴うことは困難と指摘されてきた。在庫過多がこれほど市場価格に影響し、且つ原料買付を阻害するような年がこようとは、誰もが思わなかったのだろうが。
5月時点の入荷量が昨対169%
青果市場では、青梅の入荷が5月22日で31トン。25日で67トン(前年30トン)、26日が71トン(前年30トン)で最も入荷量が多く、1週間早いピークとなった。5月時点で入荷量は昨対169%で、6月に入り注視されてきた生梅の平均単価下落を受けて、入荷量も落ち込んだ。農家らが手数料さえも見込めない価格にまで下落した事が、大きく影響した。
その為か6月中旬、例年であれば依然収穫のピークであるはずなのだが、園地で農家の作業風景を見かけることはなく、早々にネットは巻き上げられ、生育途中の梅は落下を待つのみとなった。収穫途中だった梅もあったはずであろうが、全て出荷されたのか・・・。もしくは、引き取り手があったのだろうか。
昨年以降、空樽が帰ってこないとも聞かれ、5月の塩の出荷金額が順調とも聞かれたが、持ち越し分を含めると全てが塩漬にまわるとも考えにくい。
昨年、田辺米穀からの報告では、塩の使用量が11080トン(梅の産地を概ね網羅するの塩の使用量をあわせた数量)としていた。樽換算では250万〜260万樽で、豊作傾向が2年続いたとされている。
また、令和2年では1000トン超の塩が繰り越されたとの指摘もあり、気になる情報でもある。1000トン超の塩が繰り越されてきたとすると、相当量の梅が令和3年の収穫後樽漬にされた格好となる。
この2年間で更に十分な在庫量を抱えながら、尚原料を買付を行えるとは考えられず、確かに現地では、タンクを増やしたメーカーも実際あり、落梅を回収する事業者もいたのだが、それでも、令和5年度産原料は行き場を失ったままではないのか。この状況の改善が果たして可能なのだろうか・・・。
マーケットや末端ユーザーへの対応も課題に
和歌山以外の産地では、小梅を主力とする群馬県や山梨県、長野県の作柄は取り敢えず、雹害もなく昨対を越えるという。とはいえ、潤沢に原料が集まっているわけではなく、1年を通して積極的に販売するには厳しい収量といわざるを得ず、農家の高齢化や担い手不足から産地の維持継続そのものが危ぶまれているだけに、各社が値上げ必至の状況にありながらマーケットへの積極的な対応が十分に行えるのか、困難な判断を迫られるなかで末端ユーザーへの対応も大きな課題だ。