商品規格の見直しと共に付加価値を提案し売り方をブラッシュアップ 商品提案に必要な発信力を高め、実績向上目指す
FC展開最大手の(株)丸越(本社・名古屋市天白区、野田明孝社長)は、変わらぬ品質と漬物の美味しさ、日本の食文化を担ってきた御漬物を季節と地域と共に変わらぬ日本の味として、また野菜の食べ方を提案し、エンドユーザーに優れた商品に届けている。
積極的なブランド推進に取り組む同社は、大正3年の創業から100年以上に渡り事業展開に邁進。的確なブランド展開で、専門店の強みを生かした丸越チェーン会(加藤典行会長)の動向は注目だ。
情報発信に努めながら専門店事業を牽引する加藤典行会長は、長年に渡り店舗運営に携わり、その美味しさを伝えている。また近年の漬物業界の閉塞感の中にあって、同社の開発力と提案力を発揮する専門店での取り組みが、業界活性化への起爆剤の一つになると期待も募る。現状の販売状況や顧客の傾向、また今後の見通しと課題等について、加藤会長に聞いた。
丸越チェーン会 会長 加藤典行 氏
ーー春先以降の事業推移については如何でしょうか。課題が山積する中で、昨年との違いはどういった事が挙げられるでしょうか。
加藤会長 先ずは我々業界全体に言えることなのですが、原料野菜の収量面が非常に気になっていて、梅雨明け以降厳しい猛暑が続いている事から、夏野菜の原料事情は懸案だと思います。
天候不順であることが常態化している昨今、例年原料対策には気を遣いながら、適切な手当に努めていることではあるのですが、年々この対策と収穫状況に大きな誤差が生じている様に感じます。7月の災害級の台風は影響が大きく、その対応に苦慮されてきたわけですし、常に危機感を持って対応していくしかないのだと思います。
とはいえ、私どもの扱う商品の中心が野菜であり、常に一定の品質が維持されるわけではないでしょうし、それを商品化したときに一定程度の品質を保ち続けるというのは大変なことでもあると思います。現場で最も苦労していることだろうと思うのですが、専門店においてはどのような状況にあっても、お客さまに適切な接客でその品質にご満足いただけるようにご提案しなければなりません。
それから、やはり昨年との大きな違いは物価高騰の影響ではないかと思います。お客様の考え方が徐々に変わってきたと感じますし、それが商品の購入状況によく表れていると感じます。固定費の上昇によって嗜好品の買い方が変わってきたと感じますし、若い方では嗜好品に対して予算を使うことで、それ以外のものに対する節約思考の傾向がより強まっているのだと思います。これらの傾向が、各店舗の売上実績に大きく影響しているでしょうし、今後の動向を注視しながら、我々が出来る商品のご提案方法や商品規格等の変更や工夫が必要になっているのだと考えております。
ーーユーザーサイドの漬物に対する知識によっても、提案に工夫が必要と感じます。
加藤会長 例えば、弊社で扱うキムチであれば、時間の経過とともに発酵が進み酸味がでてきますが、酸味がでる位に発酵が進んだ方が、焼いたり炒めたりといった調理によってより美味しく頂けます。逆に、キムチの場合は酸っぱくなるといくことを上手く伝えられない場合は、クレームになってしまうこともあるので、注意が必要です。
これも、その時々の商品の仕上がり状態や発酵具合によって、最適な食べ方や調理方法が異なると思いますので、細やかな商品説明によってご提案をしたいものです。そういった意味でも、私たちの接客の対応、情報発信というのは丁寧な対応が求められると思います。
価格的な課題の検討と価値提案の必要性
ーー商品開発の今後の方向性や、求められるものについては如何でしょうか。
加藤会長 先日発売された「キムレモン」のような、若い人たちの発想がこれまで以上に必要だとは思います。それから、漬物の概念を覆す商品を作っていく必要性があるのだろうと思います。
また忘れてはならないのが、価格的な課題を検討していく必要ではないかと思います。例えば、様々なお酒に合う“おつまみ”のような商品は良いのですが、ただ単にお漬物のご提案では物足りないのだと思います。以前までのような「美味しい浅漬」、というだけでは売れなくなっているのが昨今の傾向ですし、より一層お客様への訴求力を高めなければなりませんし、実績の向上を目指していくうえではこれまで以上の工夫が必要です。
そういった事から、必要とされるのは商品価値、付加価値の提案に取り組む事だと思います。加えて、売り方だと思うのですが、これまでも芸能人を広告塔に、商品のご提案をさせて頂き、上手に発信ができていたのだろうと思います。
ですが今は、SNSを利用した発信が主流になりましたし、発信の工夫、仕方でバズることが出来れば、爆発的に商品が売れるという事例が多々ありますので、メディアの使い方についても今後工夫が必要だと思います。コロナ以前から各専門店でもSNSを活用して情報発信を行なっており、地方からお客様が来られるなど成果を上げてきました。
只、全店舗で出来ているわけではありませんので、種々の課題をクリアしながら、全社的な施策として取り組むことが出来ればと考えております。
知識に加え感性も磨きながらスキルアップ
ーー専門店展開における課題では、以前からオペレーションの重要性に言及されていたと思いますが、現状についてどのようにお考えでしょうか。
加藤会長 知識的には漬物だけに限らず、販売に関わることについてより深めて欲しいですし、販売員としてのレベルアップが必要だと思います。更には、日々(流行や話題が)変化する中で、臨機応変に対応できる柔軟さを身につけて欲しいと常々考えております。
天候や気温、足を運ばれるお客様の気持ちの変化などを読み取り、ご購入したいと思って頂けるよう最適な商品をご提案出来れば、様々なシーンで丸越のお漬物を楽しんで頂けるのだろうと思います。
そういった意味でも、各店舗のスタッフのスキルアップはこれからの丸越を支えていくうえで、非常に重要だと考えております。
また丸越では、各店舗に商品が入荷された後は、例えば「サラキュー」(胡瓜の浅漬製品)など、店舗スタッフがそれぞれでカットして売り場に陳列しています。このカットの仕方も蓮に切ったり拍子切りにしたりと、それぞれのアイデアでカットしていますので、当然店舗によって商品の見え方、見せ方に違いがあると思います。
カットの仕方一つをとっても、お客様の見え方や提案に違いが出ると思いますし、ちょっとした工夫の積み重ねだと思います。そういった工夫の積み重ねが大きく売上に影響しますので、知識に加えてそういった感性も磨きながら、スキルアップして欲しい。
例えば、スイーツ業界などは非常に参考になりますし、非常に勉強になると思います。スイーツ業界の有名なパティシエの皆さんのSNSなどは、興味深いと思いますし、スタッフにも注視して欲しいと思っています。
将来的にも、「見せ方」、「売り方」、基本となる考え方や商売のあり方について、もう一度再確認をしながら、日々の業務にあたってほしいと思いますし、これらについては将来的にも必要な事として、全社的な取り組みとして考えなければならないと思います。
ーー世代や食習慣の変化に伴うお漬物の提案については、どのようにお考えでしょうか。
加藤会長 今は物が溢れかえっていますので、お漬物の良さや野菜それぞれの効能について、改めて知ってもらう機会を増やしていく必要があると思いますし、どの世代も関係なく、そういったご提案を商品の紹介や試食の際に知っていただけるよう、各スタッフが取り組む必要があるのではないでしょうか。ここまで、コロナ禍が続いてきたこともあって、非常に接客が難しい中での業務だったのだろうと思いますが、改めて私たちが取り組むべき課題、商売に取り組む姿勢を突き詰めていく必要があると思います。
丸越で扱っている商品というのは、日々のお食事をより良いものにしてくれる優れた商品が揃っていると思いますので、是非多くのお客様に召し上がって頂きたいですね。
ーーSNSの活用について、進捗状況などは如何ですか。
加藤会長 チェーン会のオーナーでも若い世代のオーナーは、既に効果的に活用して商売につなげておりますし、私も毎日欠かさずコメントをあげております。引き続き、効果的な発信で、事業の推進と商売に繋がるよう取り組んでいく考えです。
個性、魅力を店舗に反映し喜ばれる接客を
ーー今年は、アフターコロナやビヨンドコロナといわれ、事業推進への取り組みにこれまで以上の工夫が必要だと思いますが、如何でしょうか。また、事業推進におけるテーマなどはありますでしょうか。
加藤会長 これまで、お話しさせて頂いてきたことの継続であろうと思いますし、商売の基本に立ち返って業務に取り組まねばならないと考えております。
先日も東北エリアの店舗を回ってきたのですが、いつも出張先では2〜3時間程度フリーで動ける時間を作って、店舗エリアの主要な商圏や商店街、流行りのお店などを必ず視察しています。特に、流行っているお店を中心に視察して回っているのですが、やはりそこで商売をなさっている「人」が重要であるのだと再認識させられます。お客様も、そこで接客する店長さんや店員の方から商品を買いたいのだと思うのでしょうし、どういった店舗でも「人」の個性、魅力が反映されていくものだと思います。
先ず各店舗のスタッフには、商売そのものをもっともっと楽しんで欲しいですし、モノが売れてお客様に喜んで頂ければ商売が楽しいですし、日々の業務がもっと楽しくなると思います。これはどの業態、カテゴリーにも言えることなのでしょうが、優れた商品を埋もれさせずお客様に届けて、食卓等で楽しんで頂きたいと思いますし、自分の接客で商品をお買い上げ頂き、喜んで頂く事で、またリピートして頂けるのだと思います。
お取引先各位におかれましては、平素よりご指導ご鞭撻を賜り、誠にありがとう御座います。今後も事業の推進を目指しながら、各商品を取り扱わせて頂いておりますので、引き続き格別なるご高配を賜りますようお願い申し上げます。