守口大根採種事業に関する母本選抜執り行う 〜守口大根の優良品種を確保し、生産、品質の向上、更には計画生産・安定供給を図り、守口漬の消費増進目指す〜

                             (公社)愛知県漬物協会  

 公益社団法人愛知県漬物協会(曾我公彦会長)の奈良漬部会(鈴木昌義部会長)は去る12月20日、JA愛知北扶桑野菜集出荷センター(所在地・愛知県丹羽郡扶桑町)で、恒例の守口大根採種事業に関する母本選抜の実施。

 母本選抜は、名古屋名産守口漬の原料となる守口大根の優良品種を確保し、その形質を維持するため、守口大根採種ほを設置して優良品種を生産、品質の向上と計画生産・安定供給を図り、守口漬の消費増進に資することを目的としている。 

 今後も行政との協力を密に、生産農家と加工業者が三位一体となった取り組み推進の継続が肝要であり、伝統野菜継承の要の一つとする事業だけに今後の進捗が注視される。

 午前10時から事務局の進行で打合会が執り行われ、守口大根の生育状況や 守口大根の母本選抜基準について 現状報告等が行われ、引き続き母本選抜を実施し、優良品種30本が選定された。

 同事業並びに母本選抜には、扶桑町守口大根漬物組合の天野隆一組合長とJA担当者、協会からは鈴木部会長(大和屋總本家)と曾我会長(扶桑守口食品)が出席した。

  振興目指して、求められるPRへの取り組み

 冒頭の挨拶で天野組合長が謝意を表し、「今夏、これまでにない暑さから先行きを危惧していたのですが、守口大根の生育は順調な推移でした。順調だったお陰もあって全体的に長めなのですが、本日は95~110cmを基準として、皆様に選別をお願い致します」と述べた。

 また漬物協会を代表して鈴木部会長が挨拶に立ち、「これまで守口大根のGI取得の為に準備を進めてきたものの、現状では足並みが揃わず、停滞しております。

 一方で守口大根は生喫食や通常の料理では扱いにくく、酒粕で漬け込むことで、風味と旨みが増して美味しくなります。そういった事から、通常の料理ではなく守口漬として漬け込むことで、美味しくなるということをPRすべきでしょうし、様々な角度で広報活動にも積極的に取り組んでいくべきと考えております。引き続き、皆様のご理解とご協力をお願い致します」と指摘した。

 引き続き、打合事項に沿って、令和4年の出荷実績の確認と令和5年の生育状況などが報告された。今年は酷暑から、生育状況を危ぶんだものの、播種期以降、生育も順調で、計画以上の収穫も見込まれる。一方で、販売状況の変化や農業従事者の高齢化、人手不足は依然として今後の懸案とされ、守口大根においても同様である。

〈主な開催概要〉

▽令和5年12月20日(水)午前10時から午後2時まで  

▽打合会 ・時間 午前10時から

  ・開催場所 JA愛知北扶桑野菜集出荷センター(所在地・丹羽郡扶桑町大字南山名字山神前87)

(打合事項)

  (1)守口大根の生育状況及び令和4年度出荷実績と令和5年度出荷計画について

  (2)令和5年度種子の採種実績と令和6年度種子の採種計画について

  (3)守口大根の母本選抜基準について 

  (4)守口大根採種事業実施要領について

  (5)守口漬の需要動向等について

  (6)その他

▽母本選抜 

・時間  打合会終了後~午後2時まで

・実施場所  JA愛知北扶 桑野菜集出荷センター

(丹羽郡扶桑町大字南山名字山神前87)

 

〈守口大根の生育状況及び令和4年度出荷実績と令和5年度出荷計画について〉

 ▽令和4年度出荷実績

 ・作付面積 6.46ha 出荷量 139.133kg

 ・播 種 期 9月17日~10月5日 

 ・生 育 期 10月は気温も高く降水量も少なかった為、例年よりも長いものができた。

 ・収穫・出荷期 12月13日~2月3日

 ・病害虫の発生状況 センチュウ害と播種期が長引いた影響で生育不良の圃場が発生した。

 ・その他特記事項  契約数量はコロナ禍以前の数量に回復傾向であったが、害虫被害や生育不良の圃場もあり93%の出荷となった。

 ▽令和5年度出荷計画・生育状況(R5.12~R6.2出荷予定)

 ・作付面積 6.4ha 出荷量 143.000kg

 ・播 種 期 9月17日~10月12日 

 ・生 育 期 台風の影響がなく葉の生育が良好だったので、根の長さ、太さも問題なく成長した。また、害虫被害も少ない傾向。       

 ・収穫・出荷期 12月13日~

 ・その他特記事項 生育状況に応じて収穫し、出荷基準を守って良質な守口大根を出荷する。また、契約数量100%出荷できるよう組合内でお互いに協力する。

〈令和5年度種子の採種実績と令和6年度種子の採種計画について〉

 ▽令和5年産種子の採種実績   

 ・採種母本の生育状況 夏の時期の高音で一部虫害があった。

 ・採取の結果(量及び状況)  網室/0.6L 露路/0.2L

 ・その他特記事項 令和4年12月23日 母本選抜会実施

 ▽令和6年産種子の採種計画

 ・母本選抜会の実施 令和5年12月20日(水)

           打合会  JA愛知北扶 桑野菜集出荷センター

           母本選抜   JA愛知北扶 桑野菜集出荷センター

 ・その他特記事項  網室/30株 露路/50株

 

課題山積に伴い先行き懸念、抜本的な打開策急務に

 令和4年度は以上のような実績となり、令和5年度の計画についても例年並みを目指して、母本選抜が行われた。

 守口漬の需要動向について、量販向けでは、コロナ禍およそ横ばいで推移してきた販売実績も売上減少がみられるという。一方で、観光需要や外食産業の回復は顕著で、行動制限のない年末年始では、大きな期待が寄せられた。

 しかしながら、原料面においては現在のところ酒粕は概ね必要量を確保できているものの、日本酒各銘柄の吟醸酒などで利用されることが多い傾向にあり、徐々に漬物事業社の確保が難しくなるのではと指摘。原料面においても、一定程度の需給バランスが保たれているものの、農家の高齢化は着実に進んでおり、今後が危惧されている。

 また、地域の名産品、特産品の販売動向についてもダウントレンドとなっており、今後の課題としており、積極的な広報活動が求められるという。更に、コロナ禍では巣篭もり需要もあって販売は横ばいで推移したものの、物価の高騰を受けて、ユーザーの購買行動も大きく変化し、売上減少が続いているとし先行に懸念が示されており、抜本的な打開に向けた取り組みが急務といえそうだ。

        

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